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暑き日に、思いを寄せて。 [本]

ホントは、これ、読んだのがまだ寒かった時期でした。
二冊とも、震災前。
不条理に命を奪われる体験は、したくない。
誰だって、そう思うだろう。
後から、『あの時こうしておけば・・・。』というのは、
いつでもいくらでも湧き上がってくる。
東日本大震災を期に、自衛隊、ひいては太平洋戦争の軍隊、
戦死者、戦災に目を向ける若い人が増えたように思えるのは、
気のせいだろうか。

私が中学・高校生の時には、近代以前までを念入りに教え、
近代史はもう時間切れで、
『おのおの、ざっと教科書に目を通しておくように。』
という感じで終わってしまっていたのです。
よその国に、『ウソの歴史を教えるな!』なんて言われる前に、
教師から習う事も無かった。
私が太平洋戦争に関心を持ち、ノンフィクションや小説を読むようになったのは、
社会人になってからでした。
受験の時に、近代史は殆ど出題されないから、とかなんとかいう理由だったのか、
教師がそういうのを教えないように故意にしていたことなのかは、不明です。
今の教科書で、偏向した戦争史が教えられて、
ただ自国民に反日感情を植え付けるだけのようなものなら、
習わない方がましだと思うし。
必要なのは、昔の軍人がどうしてそんな風にやっちゃったのか、分からな〜い、
と非難するだけで自分達を切り離すのではなく、
どうしたら、反戦感情を個々人がきちんと持ち、阻止する事が出来るかを
学ぶ事なんじゃないかと思うのだ。


散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

  • 作者: 梯 久美子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07/28
  • メディア: 単行本


硫黄島について知っていたのは激戦区であったこと、
星条旗を立てるアメリカ兵の写真で有名だね、という程度のものでした。
フタをしちゃった、どす黒いものの正体を、
知らないままで良いものなのか?という感じで、
一つ一つ歴史を正視する必要性を感じていたのもありました。
また、こういうものを女性が書いているという珍しさも、
興味を持った理由でした。
でも、やっぱり重たいもので、実際に読むに至るまでに、
買ってから3年を要しました。

これは、中学生あるいは高校生で
読書感想文指定図書とかにして欲しいくらいのものでした。
う〜ん、まぁ、父兄からクレームつく事間違いなしだろうけどな。
いや、その前に文科省からクレーム付きそうだ。
何が起きていたのか、を知らなければ、
また戦争が起きてしまう事を阻止するのも難しいだろう。
今の段階で起きている、放射能汚染をつらいけれども受け止めている姿は、
この戦時中の日本人の姿と全く同じに見える。
もっと早い段階で民衆が一体になって、抗議をしていれば、
被害を食い止めることが出来たんじゃないのか?と後になってから言うのは、
今と変わらない。
マスコミに世論を先導させて、っていう形はホントに変わらない。

酸鼻を極める硫黄島には、
しかし、
有能な指揮官がいた。
栗林忠道。
旧制中学の後、陸軍士官学校、陸軍大学校を二番という優秀な成績で卒業した。
エリートにもかかわらず、最前線の硫黄島指揮官になったのは、
大学校を出た後、留学先にドイツを選ぶ者が多かった中、
アメリカを選び、かの国の戦力を過小評価せず、正当に評価したことで
軍部の不興を買ったりしたことなどにも依るのだと。
全くもって、今の日本社会にぴったり当て嵌められるし。
耳に心地良い言葉を言う者ばかりが、出世する。
まぁ、処世術ですよ、って嘯くヒトも多いけどさ。

兵を送り込んでおきながら、補給をまともにせずに成果を出せ、という。
今の立場の弱い会社員や、派遣社員、パート、アルバイトを使い捨てにする、
カイシャにまともにカブって見える。
日本社会は、戦後大躍進を遂げたかに見えたけども、
その実、ちっとも進歩していなかったんじゃないか?
戦後、有無を言わせず押し付けられた欧米流は、
働き詰めでも貧しかった日本人を豊かに導いてくれたものもあった。
GHQに言われてなお、日本流役人社会は残され、変わらなかったりもした。
理想の上司、と言われたら、この栗林中将みたいな人と答えるな、私。
部下に求めて、自分にも厳しく律する。
なかなか、実行出来る人は少ないし。
あまり内容には触れていないけれども、この本は絶対に読んでもらいたい、
お勧め本です。


永遠の0 (ゼロ)

永遠の0 (ゼロ)

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2006/08/24
  • メディア: 単行本


『永遠の0』のゼロは、零戦のゼロでした。
主人公の建太郎は26歳、大学を卒業し、司法試験に落ち続け、
現在無職。
フリーライターの姉慶子に、アルバイトを持ちかけられる。
戦死した自分達の祖父、宮部久蔵のことを調べるのだと。
結婚して1週間で祖母の元を離れ、海軍航空兵としてラバウルからガダルカナルなどの
戦地へ赴き、生まれた娘の顔を見てみたいと願いながら。
その娘清子は、今さらながら、父がどのような人間だったのかを知りたい、と慶子に話し、
彼女はそれを叶えようと弟と二人で彼の事を知る人々に、聞き取り調査を始める。
宮部は特攻隊として出撃し、終戦の1週間前に戦死した。
建太郎と慶子が初め持っていた、特攻隊に対する考え方は、
彼らが聞き取りを進めるにつれ、違う印象を持つ事になる。

重い話でありながら、ぐいぐいと引き込まれ、
あっという間に読み進んでしまう、引力の強い本でした。
結構途中で飽きてしまう事が多いんですよね、という後輩Bも
『すごい良かったです。全然飽きずに、すいすい読んじゃいましたよ!!』
と大絶賛していました。
細かい所が気になる、時代考証を大切にする人には何かあるかもしれませんが、
私には、とても良かった本でした。

この二冊は、ホント、中高生にも読んで欲しいお勧めの本です。
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