空気感 [本]
石田氏のエッセイです。
R25に連載していたものを、まとめたもの。
池袋ウエストゲートパークシリーズに出てくる主人公たちの年代の人たちへのメッセージ、
といったところか。
小説の感じから、訴えかけるものがブレない。
若者たちへ、でも、それよりも上の者たちへも。
この人の話を読むと、そうか、それでも私達も一歩を踏み出さないとな、
と思わされて来る気がします。
『さよならドビュッシー』の第二弾、音大講師の岬洋介が探偵役として、
謎を解いて行きます。
さよならドビュッシーと時期的には、初めの頃なんかは重なっています。
レビューでは、『さよなら〜』の方が良かった、という人が多いのですが、
私はこちらの方が好きでした。
前作の主人公のピアノ至高主義が鼻についていたのが、専らの理由ですけども。
今回の主人公は、岬が講師をしている大学に通う晶。
ヴァイオリンを弾く4年生で、学長であるラフマニノフの名ピアニストの孫娘、
初音と仲が良い。
大学が所有する、ストラディバリウスのチェロを初音が借り出そうとし、
盗まれていたのに気が付いたことから、事件は走り出す。
時価2億円。
楽器やらない人には、楽器が違うだけで、こんなに音色が違ってくるものなのか、
理解しがたいものがあるかもしれませんが、
アマチュアの私でも分かるものなのです。
いや、私はヴァイオリンは触った事も殆どないので分かりませんが、
ホルン、吹き比べさせてもらってビビったことがありました。
ね、音色が全然違う!吹きやすさも違う!
(私比。)
うぉ〜。
秋の演奏会で学長のピアノと一緒に演奏するオーケストラには、
いくつか特典があり、大学のストラディバリウスを使うことが出来るというのも、
大きな魅力の一つ。
ヴァイオリンの他に、チェロのストラディバリウスもあったのだが、
そのチェロが盗まれたために、オーケストラ内も不協和音が鳴り響き、
まとまる気配もない。
オーケストラものだというところが、今回読んでいて楽しめた理由の一つでしたが、
現実の厳しさを噛みしめながら、現実を直視したくない若者達の心情も、
きりきりと来るものがありました。
ラフマニノフのCDを聴いた後でこれを読めば、
また違う楽しみもあると思います。
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